No.13 看護師が辞める時・復帰する時

「看護」Vol.61 No.12(2009年10月号)掲載



『厳しい』『怖い』『気が強い』----これは、介護職から見た看護師に対するイメージの3Kだそうだ。某大手介護企業の管理職研修の場でこの話をしたら、管理職がずらりと、「介護職だけでなく僕らもそう思います」ときっぱりと言うのである。「ひどい話ですよね〜(笑)」と言うつもりだったのに、思いっきりうなずかれて『そのとおりです』という感じになってしまった。本連載の初めの頃、「看護師は優しい天使か?」という一般人の看護師に対するイメージを書いたのに、接触の多い、実際に一緒に仕事をしている人々からは、天使どころか、厳しい・怖い・気が強い、との言われよう。

こうなれば、看護師のイメージって、もう人から言われるばかりでなく、自分たちで発信していきましょうよ!!

さて、夏季賞与の支給が終わった7月、8月に退職者が出ませんでしたか? 人が動く時期は、4月がダントツに多いが、次いで、賞与支給月とその直後である。賞与をもらって仕事を辞めるって、当然の権利ですが、組織としては寂しい限り。また、「何で賞与もらって辞めんのよー!」などとは声に出せず、と言ったところだろうか。弊社の看護師の転職希望時期を見てみても、4月が最も多く、次いで8〜10月、1〜2月となっている。偶然なのかもしれないが、賞与との関係性はあると見ている。退職後少し休みたい、遊びたいという欲求を満たして、その時間を経て再就職する場合が多い。逆に言うと、この時期には人材を確保しやすいとも言える。



働く看護職員・辞める看護職員

厚生労働省の資料1, 2)によれば、現在、就業している看護師は81万人、准看護師は38万人。また、65歳までの看護職員のうち、免許保有者から就業者数を減じて推計した潜在看護職員数は、全国でおよそ55万人と言われている。看護職員総数は増加しているが、需要もまた増加しており、いわゆる看護師不足は慢性的な課題として残っている(表1)。


表1 働いている看護師数と働いていない看護師数

就業看護師数 811,972人1)
就業准看護師 382,149人1)
潜在看護職員数 550,000人(推計)2)

看護師不足について考える際にまず出てくるのが「離職率」であるが、2004年度のデータで比較すると、全産業の17.5%に対し、看護職員の12.3%という数字はとりわけ高いわけではない3, 4)。しかし、看護職の離職率は年々増加傾向にあり、2008年度では14.5%となっている5)。したがって、もともと継続就業意識の高い看護職の離職をどう止めるかといったあたりが鍵になる。つまり、なぜ辞めてしまうのか、が鍵になる。

そこで、離職理由の推移を図1で見てみると、看護職員の離職理由で減少しているのは「結婚」であるが、依然として上位の理由として挙げられるのが?出産・育児、?他分野への興味、?看護内容への不満である。また、近年上昇傾向にあるのが、1)勤め先の理由、2)契約期間満了、3)家事との両立しない、4)残業量が多い、5)休みが取れないである。


図1 看護職の離職理由の変化

図-1

(日本看護協会:平成18年度 潜在看護職員の就業に関する報告書)



もう一点、最近話題になることの多い、新人看護師の離職理由については、基礎教育終了時(つまり卒業時点)の能力と、臨床現場で求められる実践能力とのギャップによるものが大きく、専門的な仕事ができない、事故を起こしたらどうしよう、といった不安を増大させ、自分は看護師に向いていなのではないかと悩み、1年未満で退職してしまうということが大きい。特に、看護師数の大きい特定機能病院では顕著に見られるという。



看護師の働く場所の動向

今の職場では、残業が多いし、仕事もキツイ、いっそ違う分野で仕事してみようかと考える看護師は少なくないが、そうは言っても、看護師の就業場所で多いのは、病院(62.41%、83万1,921人)と診療所(21.82%、29万929人)であり、8割以上の看護職員は医療機関で仕事をしている 6)。また、この割合は、総看護職員数が増加してもほぼ同じ割合で推移している。看護師の機能は社会のさまざまな場面で求められているが、やはり働く場のベースは医療機関にあるのが現状である。

一方、病院や診療所以外の場で働く看護職員数の推移であるが、最も多いのが、介護老人保健施設(2.70%、3万5,963人)、次いで、居宅サービス等(2.54%、3万3,923人)、市町村(2.54%、3万2,702人)、訪問看護ステーション(2.05%、2万7,307人)、介護老人福祉施設(1.91%、2万5,505人)となっている7)。なかでも介護関係で働く看護職員の割合は、ここ数年で増加している。超高齢社会を背景に介護の現場では、介護を必要とする高齢者数も増加し、またその高齢者もより医療依存度が高くなることが予想され、そういった意味では介護領域では看護の機能がより強く求められるはずである。

また、介護保険制度の開始に伴って登場したケアマネジャーの合格者は、全体の31%を看護師・准看護師が占めており、それとともに居宅系サービス事業所に勤務する看護師も増加している。また、介護保険制度の今後の方向性と利用者のニーズを考えると、現状大きな変動は見られない訪問看護の領域で仕事をする看護師も増加すると見ている。

ところで、看護師の確保に苦戦している介護施設からは、看護師がなかなか定着しないとの採用担当の声を聞くが、介護施設で働く看護師の不満の声は、大きくは3つある。?システムが整っていないので責任が持てない→受け入れ体制の不備や医療機関等との関係と業務整理がきちんとされていなので、そのような環境下では自分は責任を持って仕事ができない、?介護職との関係→介護と看護の役割の取り方や介護職との関わり方に対する悩み、?組織風土→理念・ビジョンへの非共感、の3つである。

各介護事業者では、看護職と介護職の役割の明確化や、業務整理等を進める動きにあるが、一方では、この業界で仕事をしようという看護師側のきっかけが、「楽そうだ」とか「夜勤がない」とか「少しのんびりしたい」といったものであることも多く、現場の人手不足感に押されて、そもそも定着自体が難しい看護師を採用しているという側面もあるような気がしてならない。

それは、介護の中で看護師にはどのような役割があるのか、また、どんな役割を果たせばよいのかが明確にされておらず、介護保険制度上、看護師の配置が義務づけられているので単に頭数が必要という考えのところも中にはある。かつ、介護希望の看護師の中から自分の施設を選んでもらおうという考えが主流なので、もっと介護の中の看護の魅力を伝えてほしいなぁ、と思ったりするのだが。

仕事の魅力は、以前も書いたことがあるが、実は介護だけでなく、どの職場でも共通性があることで、採用したいと考えている看護師のターゲットを広げて、自院のアピールを考えることをお勧めしたい。



採用・退職にまつわるエピソード


自分より優秀な人は採りません

何て次元の低い、と思われるだろうが、現実には意外と多いのだ。私は以前、ある会社の社長が、組織マネジメントの極意のような話の中で、このセリフを堂々と発表したのを聞いた時に幻滅した。

ある介護系の会社では、看護のレベルを上げようと看護師の管理職が率先して改革を行っているが、現状をいろいろと調べてみると、施設長のレベルとメンバーのレベルに相関がありそうだったという。簡単に言うと、きちんとした人は不採用とし、自分の意を汲んで仕事してくれそうな人で固めているようだという。それまで、採用の決定は各施設の長が行っていたものを本部で一括管理し、介入するようになって一段落したと思ったのもつかの間、今度は、みんなでいじめ始めたというのだ。何とも情けない話ではあるが、実際にある話なのだ。そして、それは、まさかと思う身近にあったりする。

看護に限らずだが、管理職やトップは善人であれ、なのだ。いじめを放置したり、それを許したりするような組織風土は改めないといけない。

手っ取り早いのは、複数の人数を同時に入れ替えることである。意地悪が10人いる中にそうでない人が1人入ったら、確実にそのチームは「意地悪が主流」でそれに合わせねばならなくなる。意地悪が3人で残り7人がそうでなければ、おそらく「意地悪は傍流」となり、それを許す環境ではなくなるはずだ。

ある病院では、新しく入った看護部長が組織の人間関係上問題があると考えられる看護師複数をバラバラに配置替えし、自らは、病棟・外来を歩きまわって、みんなに声をかけてあいさつしまくる、という日々を過ごした。半年後ぐらいには、感じの悪かった受付もにこやかに、病棟では患者さんや家族にも進んで声をかける明るい雰囲気に激変したのを、私は目の当たりにしたこともある。


こんなバカな管理職の下では働けません

このセリフを聞いた時にも唖然とした。管理職も問題があったのかもしれない。たぶん何かあるのでしょう。しかし、こんなに堂々と言うのであれば、仕方ない、辞めていただきましょう。管理職の人に対して、「しっかりしてよー!」とは思ったが、それよりもこのセリフを堂々と言う人は、きっと、どんなによいと周りが評価する上司に対しても同じセリフをまたいつか言うはず。それは、1)にもつながり、組織・メンバーの雰囲気が悪くなるので、言われたら、退場してもらう勇気も必要だろうと思う。私もこんなセリフを聞いてしまうと、なかなか、仕事も紹介できないなぁと思う。私にも良心はありますからね。


やっぱり看護師がしたいな、と思って

がっかりすることばかりではない。最近、私は、このセリフを聞いて、すごく嬉しい気持ちになった。彼女は、海外留学していた看護師で、帰国したばかりである。海外で看護師免許を取得して現地で仕事をしたかったそうだが、諸事情もあり帰国となった。現地では、ウェイトレスのアルバイトをしていたそうだ。ライセンスがないと、ナーシングホームでのボランティアですら受け入れてもらえない、という現実を目の当たりにした。

ウェイトレスをしていたお店で料理人として働いている日本人は、そのお店で料理長として活躍していたそうだが、その時に、自分の本業で働いていてうらやましい、と心から思ったという。そして、やっぱり自分は看護師がしたいんだ、「海外で」働くことではなく、場所ではなくて、「看護師」が好きなんだ、と海外で改めて感じたのだという。熱心に話すのを聞きながら、私もなんだか嬉しくなった。

この彼女は、自らの経験の中から、やっぱり看護師が自分のやりたいことなんだと認識した。しかし、先に述べた潜在看護師の中には、自らでは気づくことのできない看護師が多くいるはずである。その彼女たちに、「やっぱり看護師に戻ろう」「やっぱり看護師として働こう」と思ってもらうには、何が必要なのだろうか。

やはり何か発信していく必要がある。今がまさに、そのタイミングではないだろうか。



●参考文献
1)厚生労働省:平成18年保健・衛生行政事業報告, 2006.
2)厚生労働省:第六次看護職員需給見通し, 2004.
3)厚生労働省:雇用動向調査, 2004.
4)日本看護協会:病院における看護職員需給調査, 2004.
5)日本看護協会:平成18年度 潜在看護職員の就業に関する報告書(ナースセンター事業報告書より)
6)全国厚生労働関係部局長会議資料,平成21年1月20日開催
7)前掲書6)
8)川添チエミほか : 介護サービス事業での看護師の役割,介護人材Q&A, l6 (52), 2009.

著者

深澤 優子 (ふかざわ・ゆうこ)

著者の写真 1968年、北海道生まれ。R&D Nursing ヘルスケア・マネジメント研究所代表(看護師・MBA)。弘前大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程卒業後、日本医科大学付属病院、神奈川県立衛生短期大学、ボストン日本人学校教員を経て日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科修了。2児の母。

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連載のはじめに

「“生き残るのは、変化できるもの”──これは進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの言葉である。生き残っていくのは、強いものでも賢いものでもなく、環境変化に適応しうるものだと言う。看護の必要性は普遍的なもので、今後ますます複雑な役割が求められると同時に活躍の幅も広がると私は信じている。だからこそ、この言葉にあるように変化していくことも必要で、そのことによってますます看護や看護師が生き生きと輝きを増すことを願っている。そんな思いを込めて1年間、“生き残る看護・生き残るナース”というテーマで書いていきたい」


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