No.02 いまどきナースの転職事情と理解

「看護」Vol.60 No.12(2008年10月号)掲載



いまどきナースの転職事情と理解

「全く最近の若い子は......」と言われていた私も気がつくと言う側になっていたりする今日この頃。私も昔は、「昔はね、私たちの頃はね......」という大先輩方のお説教に(今は時代が違うんだから、比べないでほしい)と思ったものだ。


新人看護師──辞めました

6月のある日のこと。「私は、看護がやりたくて看護師になったんです。患者さんのために一所懸命看護がしたかったんです。だけど、プリセプターもいないし、誰も教えてくれないし、忙しいし。思うような仕事が全くできなかったんです。自分が描く看護師像と実際の姿が全く違うことに落ち込み、納得がいかなくなり、疲れ果てて、とても続けられないと思いました。師長さんにも同僚にも相談できませんでした。このまま仕事をしていたらいつか事故でも起こすかもしれないと思ったし、やっても、やっても仕事は終わらないし、とにかく疲れたので辞めました」

えーっ??? 

すでに5月末で退職したという。わずか2カ月である。たったの2カ月で退職とは、決断が早すぎるのが何より残念でならない。このような結論を出したのでは、冒頭にあったように「看護」がやりたくて看護師になった、患者さんのために一所懸命看護がしたかったと言っても、その機会を再度得るのは簡単ではないだろう。

しかし、「今度こそ看護がしたいと思っています。仕事をしたいんです」。うーん、困った。「看護師の資格を活かして企業に就職とかできますか?」......難しい......。


新人看護職の悩みと辞めたいと思った理由

新人看護職の悩みと辞めたいと思った理由を調べてみると1)、「看護職になり仕事を続ける上での悩み」の上位は、?専門的な知識・技術の不足、?医療事故への不安、?基本的な看護技術が身に着いていない。「辞めたいと思った理由」の上位としては、?看護職に向いていないのではないか、?医療事故への不安、?ヒヤリ・ハットレポートを書いたこと、となっている。

近年の患者の権利意識の向上や医療安全の観点から、人間を相手とした技術実習の経験が制限された結果として、新人看護職の臨床看護実践能力と現場で求められている水準とのギャップが、浮き彫りとなっている。前出の、わずか2カ月で退職した看護師の発言にも、これらの項目が含まれていることがわかる。

今、各医療機関では、そのような観点から、新人看護職員の定着率を上げる対策として、プリセプターシップを強化し、精神的サポートも含めた決め細やかな研修制度の構築に注力している。しかし一方では、前出の新人看護師のような環境にある(またはそう感じさせる)医療機関もまだまだ少なくない。


潜在看護職と看護管理者のギャップ

退職したナースと現場の管理職の認識のギャップを示しているのが、2007年の日本看護協会の調査2)である。退職した看護職員の離職理由には、勤務時間の長さや夜勤の負担といった勤務条件に関するもの、医療事故に対する不安や責任に対する負荷といったものが含まれているのが特徴的である。また、実際に離職経験のある潜在看護職と看護管理者とでは、離職理由の考え方に認識のずれがあり(表1)、看護管理者は、離職理由についてライフイベントやいわゆる自己都合によるものと認識している。辞めた看護職員と仕事を継続している看護職員ましてや管理職ではギャップがあるのも当然だが、この結果には、看護職員の定着を向上していくためのヒントが含まれているように思う 3)。


表1 潜在看護師の離職理由と看護管理者の把握する理由の比較

表1-1表1-1

(日本看護協会:2007年潜在ならびに定年看護職員の就業に関する意識調査)



中堅ナースの悩みと不満

さて、新人看護職員の定着率向上や潜在看護職の再教育に重点が置かれる中、日々の指導に当たる中堅ナースの負荷も増加しているようである。 ある5年目のナースは、「もう頭に来ましたよ。だって、新人指導のオリエンテーションで『新人さんに負荷を与えないように、怒ったりしないように』って言うんですよ。何でもかんでも新人、新人って」。さらにヒートアップしてきて、「こっちは、しなくてもいい仕事までして、新人に付き添って帰りの時間も遅くなっているというのに全くもう。おまけに新人が泣き言でも言おうものなら、プリセプターの私の責任みたいな。私だって新人の時は、怒られたし、辞めたくなったりもしたし、でも、乗り越えるんです。みんな、自分で」「全く、怒るな、優しくって、いったい私たちには誰が優しくしてくれるんですか!」と、話は止まらない。

確かに、新人の定着率を向上させることや潜在看護職員の発掘と再教育は、今の看護職員の確保の重点課題である。しかし、その陰で中堅ナースに負荷がかかり、逆に現在の重要な戦力である彼女らが疲れ切ってしまう、というようなことにならないような対策も必要だと思っている。


初めてのプリセプターシップ

プリセプターの体験と思いをインタビューした報告4)によると、プリセプターはプリセプティのお姉さん的役割を認識して相談に乗り、気遣い、教えて、期待し、失望する。また、新人のペースに合わせようと見守ることを学び、相互の距離感を調整しているという。

また、プリセプターは周囲から評価されていると感じ、先輩からのダブルメッセージに混乱し、評価に納得できずに反発を感じる体験をしている。一方、仲間の支援を受けたり、上司や先輩からの肯定的な視線を感じ取り支持されることにより、チームでやればいいんだという協力を得る可能性に気づいたという。また、新人の失敗に対して、責任を感じたり、自分を責める様子がうかがえたともいう。

私もプリセプターを初めて経験した時、確かに、こんな感じだったと思う。でも、新人さんを怒らないようにとは、しつこく言われた覚えはない。新人の時には、厳しい先輩もいたし、ドクターにも怒鳴られたことがある。その時には本当にビビッてしまい逃げ出したくなったものだが、周りもみんなそんな感じだったし、2年目以降は、(何、怒鳴ってんだ)と心の中で逆切れしながら対応したものである。そういう時代ではないということなのだろうか。


いまどきって何だ?

いまどきとは何か----。「いまどき」を考えていたら、去年まで都内の高校で医療看護の非常勤講師をしていた時のことを思い出した。「スッピンでは恥ずかしくて外を歩けない」、と付けまつげを2枚付けたお面みたいなメイクをバッチリしていた女子高生が保育園に実習に行く際、化粧を落とすか落とさないかで担任の先生ともめていた。(明らかに泣きますよ、その顔見たら保育園児は)と思った私は、(落とすに決まってんだろうが!)と思ったのだが、担任の先生は忍耐強く、優しく丁寧に生徒にお話をしていた。厳しくすると学校に来られなくなってしまう生徒が増えているのだと言う。

授業をサボって見つかって放送で呼び出されて正座させられてビンタされる時代は、当の昔に過ぎ去ってしまった。当時も、そんなに落ち込むようなことはなかったし、今となっては、楽しい思い出の一つなのだが。


仕事に対する高い意識なのか、わがままなのか?

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』 5)という本がある。この中には、業種は異なるが、今の「若者」と呼ばれる世代と仕事の関係が書かれている。大卒入社3年以内で退職する人は実に36.5%、その数は、まだまだ伸び続けていると言う。それについて、企業の採用担当者は、本人の希望と実際の業務内容がかみ合わないミスマッチだと言う。

採用担当者は本書の中で、「今の若者はわがままな反面、我々の世代と比べると明らかに忍耐力が劣っている。だいたい企業で最初から好きな仕事ができるなんて考えが甘い」と、ばっさり切り捨てる。しかしその一方で、その会社ではインターンシップを導入して、学生に実際の職場を体験してもらい、入社後のギャップを少なくする取り組みも継続しているのである。若者に対して文句を言いながら、忍耐強く対応している人事担当者の苦労が想像できる。

日本の社会では、これまでの年功序列・終身雇用制度が最大の優良組織の条件とした時代から変化し、採用する人材も変化してきた。その中で今、就職活動している学生は二極化し、明確なキャリアプランを持つタイプと、有名企業をとにかく手当たり次第に受けるタイプがあるそうだ。

明らかに優秀なのが前者だという。しかし、彼らは仕事に対する意識が高すぎ、「何でもやります」的な就職活動で入社した昭和的価値観(というらしい)の先輩にとって、「自分がこの会社に来たのは○○をするためだ」と言ってのける後輩はわがままに映るらしい。しかし、バブル崩壊後の企業の厳しい選考を勝ち残るために必要な「進化」の結果でもあると著者は記している。


看護師はどうなのか?

看護師はどうなのだろうか? と考えていた時、「"へこたれない"看護師を育てる」 6)という記事が目に留まった。

その中で、看護基礎教育の中で今後、力を入れるべきこととして2点挙げられていた。一つは、「看護の使命、役割を学び、素晴らしい仕事だと誇りを持つこと」。もう一つは、「看護師は組織で働くものだということ」であると言う。

「自分が思っていた看護とは違う」と感じる新人看護師は少なくないと記されていたが、私も20代の頃に「これは看護じゃない」というような気持ちになったことがあるので、そう感じる看護師の気持ちはわかる。しかし、今思うと、大きな組織が、たかだか1人の看護師の意見で動くはずもなければ、また言っている自分自身もそんな強い意志があっての発言でもなかった。

ところが今、私は日々の仕事の中で、「自分が思っていた看護とは違う」というコメントは、新人看護師や若い看護師だけではなく、年齢に限らず気になる発言としてよく耳にしている。

「いまどき」とは、年齢でひとくくりにできるものではないのだろう。40代の看護師だって、「患者さんのための看護はこうあるべきだ」と言うが、ではそこで、自分がそれを実現できる環境をつくったり、実践することは自分の役割と思っていないようなところがある。

看護の教育には、看護のスペシャリストを育てる機能以外のものが必要だと常々感じていた私は、その一つの鍵が「組織で働くということ」を教えることにあるという意見に大いに共感した。実は、すっと胸に落ちたのは、いまどきを「年齢」をキーワードに考えてしっくりこなかったのが、年齢だけではないのではないかということで解決されたような感じがしたからである。

組織の中で仕事をするということについての基礎教育は、実は最近されていないのではなく、これまでされてこなかったのだから、今の私と同世代の看護師にも「いまどき」の片鱗があるのだ。 次回は、そのエピソードと、会社で仕事をしている一般社会人からの看護師さんへの素朴な疑問をテーマとしたい。



●参考文献
1)日本看護協会:2005年新卒看護職員の入職後早期離職防止対策報告書
2)日本看護協会:2007年潜在ならびに定年看護職員の就業に関する意向調査
3)深澤優子:看護職のワーク・ライフ・バランスを支える多様な働き方の可能性,看護管理, 18(8), p.175-179, 2008.
4)日沼千尋・小川久貴子:プリセプターシップの実態,看護管理,15(3), 2005.
5)城繁幸:若者はなぜ3年で辞めるのか?,光文社新書,2006.
6)座談会"へこたれない"看護師を育てる,週刊医学界新聞,No.2790,2008年7月21日.

著者

深澤 優子 (ふかざわ・ゆうこ)

著者の写真 1968年、北海道生まれ。R&D Nursing ヘルスケア・マネジメント研究所代表(看護師・MBA)。弘前大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程卒業後、日本医科大学付属病院、神奈川県立衛生短期大学、ボストン日本人学校教員を経て日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科修了。2児の母。

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連載のはじめに

「“生き残るのは、変化できるもの”──これは進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの言葉である。生き残っていくのは、強いものでも賢いものでもなく、環境変化に適応しうるものだと言う。看護の必要性は普遍的なもので、今後ますます複雑な役割が求められると同時に活躍の幅も広がると私は信じている。だからこそ、この言葉にあるように変化していくことも必要で、そのことによってますます看護や看護師が生き生きと輝きを増すことを願っている。そんな思いを込めて1年間、“生き残る看護・生き残るナース”というテーマで書いていきたい」


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