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新人・後輩のアセスメント力を育む指導 NEW

看護師の思考を刺激するOJT

  • 阿部幸恵 編著
  • B5 192ページ (判型/ページ数)
  • 2023年12月発行
  • 978-4-8180-2758-9
本体価格(税抜): ¥2,800
定価(税込): ¥3,080
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「指導の時間がとれない!」と嘆くすべての先輩ナースのために、
ケア場面に沿った「OJTでの声かけと行動」をマンガで例示!

新人・後輩の指導に当たる先輩ナースの共通の悩みは「価値観のギャップ」「指導の時間や場の確保」「具体的な指導方法」ではないでしょうか。
本書では、【先輩ナースが日々行う看護実践のすべてが指導である】との前提に立ち、看護の基盤となる「アセスメント力」を磨く方法を、「OJTでの声かけと行動」に落とし込んで解説します。


第1章 看護師が行う情報収集とアセスメント

1.病棟や外来で、一人で動ける力が「看護実践力」なのか?
 1)「看護実践力」とは何か?
 2)「ひとり立ち」と「看護実践力」

2.看護師の思考過程:思考の両輪
 1)看護師の思考過程を育てる
 2)看護過程は連なっている
 3)問題解決型思考と目標志向型思考
 (1)看護師は対象の看護問題を探したくなる/(2)問題が解決した後/(3)看護の対象にどうかかわるのか/
 (4)看護の価値は「その人らしさ」を支えること

3.対象をとらえる「3つの視点」
 1)退院サマリーから学ぶ
 2)看護に必要な情報を得るための「3つの視点」
 (1)虫の目/(2)鳥の目/(3)魚の目
 3)生活にフォーカスを当てるのが看護師

4.対象である「人」の多様な側面
 1)「人」とは、どのような存在なのか?
 (1)人とは、生命をもつ存在/(2)人とは、精神活動をする存在/(3)人とは、幸福を得ようとする存在/
 (4)人とは、生物学的性差だけでなく社会・文化的性差をもっている存在/(5)人とは、時の流れで変化する存在/
 (6)人とは、生活を営む存在/(7)人とは、社会とかかわり社会の一構成員である存在/
 (8)人とは、環境に影響されるとともに環境に働きかける存在
 2)対象である「人」の全体像をとらえるために

5.現象を「看護の情報」とするための専門的知識と概念
 1)初学者の情報収集
 2)現象と知識がつながるか
 3)データを意味づける
 4)看護師として考え続ける姿勢

6.アセスメントを楽しもう!
 1)アセスメントのステップ:苦手意識からの脱却を目指して
 (1)情報収集/(2)分析/(3)集約/(4)解釈/(5)問題の明確化

第2章 新人・後輩を指導する前に知っておきたいこと


1.指導の心得:7か条
 1)新人や後輩の常識・価値観と、指導者たちの常識・価値観は違って当然と心得る
 (1)違うことは「悪」ではない/(2)学習方法の違いを理解する/(3)何のために学習させるのか
 2)新人や後輩の人間関係の築き方は、指導者世代とは異なり、また未熟で当然と心得る
 (1)リアルとネット、2つの社会をもつ「Z世代」
 3)新人や後輩は、自身の考えや感情を表現しにくいものと心得る
 (1)新人や後輩は、変化する社会の影響を受けている/(2)表情と気持ちが一致しない学生たち/
 (3)関心をもち、人として近づいてみる
 4)誰でも、主体的かつ継続的に学習することは難しく、失敗と成功の「ゆらぎ」を経て成長すると心得る
 (1)主体的に学習できるよう、指導者が仕掛ける/(2)学習内容を絞り、具体的な課題を出す/
 (3)おかれた状況、感情、思考を踏まえてサポートする
 5)新人や後輩の能力と、育ちにかかる時間は、一律ではないと心得る
 (1)看護を行ったか、行わなかったかを、日々問い続ける
 6)2年目以降の後輩指導は、新人指導より重要と心得る
 (1)タスク重視の「点灯人」になっていないか?/(2)「手」をかけた後は、「心」をかけ続ける/
 (3)自分で考えて試行することを促し続ける/(4)「できる」「できない」のタイプを見極める
 7)「現場は忙しい」「OJTで指導の時間はつくれない」は通用しないと心得る

2.人の思考とは
 1)「抽象のはしご」をうまく昇降する
 2)4つの思考のタイプ:「推論」「問題解決」「意思決定」「アナロジー(類推)」
 3)「論理的思考」と「批判的思考」
 4)認知的な情報処理のプロセス
 (1)環境からの入力/(2)環境への出力
 5)フローを引き出す指導で「注意」を向けさせる
 6)環境から何をとらえ、看護に必要な情報にするか

第3章 「実践型看護過程」に沿ったOJTでの指導例


1.看護過程と実践のコネクト:「実践型看護過程」
 1)看護過程を確認することで、看護師の思考力が育つ
 2)4つのフェーズにおける指導のポイント
 3)思考の様式で4つのフェーズをとらえる

2.アセスメント力を育む指導例
 A:大山千沙子
 1)間接的フェーズ:情報の共有
 2)間接的フェーズ:知識の確認①
 3)間接的フェーズ:アセスメントと問題抽出①
 4)直接的フェーズ:アセスメントと問題抽出②
 5)行為の中のフェーズ:ケアの実施
 6)行為後のフェーズ:本日の振り返り
 7)行為後のフェーズ:知識の確認②
 B:川添宣子
 1)間接的フェーズ:情報の共有
 2)間接的フェーズ:知識の確認①
 3)間接的フェーズ:アセスメントと問題抽出①
 4)直接的フェーズ:アセスメントと問題抽出②
 5)行為の中のフェーズ:ケアの実施
 6)行為後のフェーズ:本日の振り返り
 7)行為後のフェーズ:知識の確認②
 C:熊谷武夫
 1)間接的フェーズ:情報の共有
 2)間接的フェーズ:知識の確認①
 3)間接的フェーズ:アセスメントと問題抽出①
 4)直接的フェーズ:アセスメントと問題抽出②
 5)行為の中のフェーズ:ケアの実施
 6)行為後のフェーズ:本日の振り返
 7)行為後のフェーズ:知識の確認②

第4章 新人・後輩のアセスメント力を育む指導


1.アセスメントがうまくいかない3つのタイプへの処方箋
 1)知識不足で情報収集が不十分なタイプ
 (1)視野が狭く、最低限の情報しか見ていない/(2)日常的にケアの根拠を考えることをしない/
 (3)仕事を通じて「人」をとらえるために必要な情報を思考しない
 2)部分的なアセスメントはできても、統合して考えられないタイプ
 (1)「対象となる人」の全体像を描けない/
 (2)「申し送りの廃止」や「診療の補助」業務優先で、看護独自のケアが失われている/
 (3)個々のアセスメントを統合して看護につなげる努力を
 3)対象との関係性から引き出される現象をとらえられないタイプ
 (1)日々のかかわりから情報を集められない/(2)「診療の補助」業務に目を奪われる学生たち/
 (3)食の進まない患者への、看護独自のケアを目の当たりにして/
 (4)「かかわり中心型」の看護師にしか得られないもの/
 (5)素晴らしくもあり、危険でもある「言葉」の取り扱い

2.ナイチンゲールの「三重の関心」に沿って思考力を強化する指導
 1)「三重の関心」をもつということ
 (1)看護の知・看護の心・看護の技/(2)知的な関心/(3)対象への関心
 2)「知的な関心」がもてるような指導方法
 (1)「知識不足で情報収集が不十分なタイプ」への指導
  ①「間接的フェーズ」で知識を確認し、知識を増やして情報と関連づける
  ②「直接的フェーズ」で知識を確認し、知識を増やして情報と関連づける
  ③「報告時」を利用して知識を確認し、増やす
  ④「行為後のフェーズ」で振り返り、知識を確認して増やしていく

 3)「対象への関心」がもてるような指導方法
 (1)「部分的なアセスメントはできても、統合して考えられないタイプ」への指導
  ①看護過程を使って簡潔に申し送り、アセスメントを統合させる
  ②カンファレンスや勉強会でアセスメント関連図を作成し、ケースカンファレンスを行う
 (2)「対象との関係性から引き出される現象をとらえられないタイプ」への指導
  ①「直接的フェーズ」やケアの後に発問をし、モデルを示す
  ②プロセスレコードを作成し、関係性から生じた現象を自ら見つけさせる

【コラム】

◆ナイチンゲールが危惧したこと
◆思考するうえで大切な看護の中心概念(メタパラダイム)
◆X・Y・Z世代そしてα世代 
◆「プロセスレコード」の研修は指導者にも効果的!
◆メタ認知


はじめに

 原稿を書くという作業は、相当なエネルギーを必要とします。企画の段階
では、「こんな内容を書こう」というふわっとしたイメージはありますし、本
書で書いた内容はこれまでに研修などでも話してきたことですが、話し言葉
を補うスライドを作成するのと、書籍となる原稿を書くのとでは、大きく異
なります。
 パソコンに向かい、言葉を連ねて頭の中のイメージを文章化する「言語化」
の作業は、かなりの集中力と根気が必要となります。ある程度書いては読み
返し、修正し、何日か寝かせて、また読み返し、加筆や修正を重ねていきます。
何ページも書き進められる日があるかと思えば、数行で詰まってしまい、何
日も気に入った文章が書けないこともあります。執筆中は、常に書籍のこと
が頭から離れません(私だけかもしれないけれど……)。

 このような作業を進めていく途上で、プライベートで執筆を進められない
事態が起きました。2023年3月の、父の急な病気入院です。高齢の母は認
知機能の低下が進む中、3月末には父の在宅療養が始まりました。まずは、
両親と私の生活を整えること、大学での役割を果たすことを優先に生活しな
ければならなくなりました。
 家庭内でのタスクが必然的に増えたので、仕事・趣味・家事のそれぞれの時
間配分について、優先することを考えつつ組み立てる必要が出てきました。
私は、物事を考える際に「みんなが幸せなこと・何も諦めないこと」を前提に
します。時間内に集中して大学の仕事を行う、自宅外で行っていたこと(バ
レエのレッスン・ショッピング・美容室など)は自宅近くに変える、買い物は
通販に切り替えるなど、自らの意思で生活を徹底的に見直して、やりたいこ
とをすべて諦めずに、楽しみながら生活ができるようになったのが、5月で
した。

 締め切りがとっくに過ぎて、見通しがつかないことに焦る編集者の気持ち
を気にしつつ、ゴールデンウイークに冷水育先生の手も借りて第3章を書いた
のですが、それからしばらく、大学の授業のために原稿に向かえない日々が
続きました。執筆の時間を生み出せるようになったのは、大学の前期授業を
終えてからでした。
 そこから、がーっと一気に書き上げるつもりが、文章に関連してさま
ざまなことが気になり、関連する書物を読みふけったり、絵本を探したりで、
思った以上に時間がかかりました。それでも、これらは私に「新たな師との
出会い」と「恩師たちとの再会」をもたらしてくれたとともに、原稿に力を与
えてくれたと感じています。

「新たな師」というのは、溝上慎一先生です。溝上先生のご著書はアクティ
ブラーニング関連ですでに何冊か読んでいたのですが、2023年夏に行われた
日本看護学教育学会第33回学術集会において、溝上先生が特別講演の講師
を務められ、私は僭越ながら座長を担当させていただきましたので、座長の
準備をしようと、執筆を小休憩して、最新の先生のご著書を手に取ったのです。
 溝上先生の書籍は、私に、大学生・大学院生時代の恩師、福沢周亮先生と
の学びを鮮明に思い出させてくれるものでした。福沢先生から学んだ心理学
や一般意味論を思い出し、院生のときに何度も読んだ井上尚美先生、鈴木宏
昭先生、S.Iハヤカワ先生の書籍や、学位をとった私に福沢先生がメッセージ
を書き込んでくださったご著書、ゼミでのノートなどを取り出して、当時を
回想しました。

 すると、今まで学んできたことが看護と結びつき、停滞していた執筆が動
き出したのです。これは、まさしく、福沢先生をはじめとする先生方との紙
上での再会で力を得たとしか言いようがありません。このような先生方との
出会いによって夏に再開した私の執筆は、秋を待たずに終えることができま
した。
 ちなみに、大学院の研究で扱った絵本も原稿に花を添えてくれました。私
は、今では医療界のシミュレーション教育を専門としていますので、絵本から
はずいぶん離れてしまいましたが、今回の執筆で再度絵本を読み返し、そこ
に出てくる言葉の素晴らしさを感じています。書籍に登場する絵本たちはど
れも、前を向くパワーを与えてくれます。機会があれば手に取っていただけ
ると幸いです。

 さて、本書は、現場で新人看護師や後輩たちを指導される方々のために書
きました。『新人・学生の思考力を伸ばす指導』『臨床実践と看護理論をつなぐ
指導』(いずれも日本看護協会出版会刊)の続編となります。
 第1章では、看護実践力について、看護実践を支えているのは看護過程の「情
報収集・アセスメント」であることを前提として、話を進めています。そして、
看護の対象である「人」をどのようにとらえるのかという基本に立ち返り、改
めて人のとらえ方をみなさんが学べるように、新人・後輩たちと共有できる
図や様式を紹介しています。
 第2章では、これまで指導的立場にある方から受けた、たくさんの相談や質問
を踏まえて、「指導の心 得:7か条」を提示しました。そして、「思考」とは
何かを掘り下げて説明しています。
 第3章では、3人の患者さんが登場します。患者さんのケアにあたる新人・
後輩と指導者らのやりとりから、「実践型看護過程」の各フェーズでの指導方
法を具体的に例示します。
 第4章では、私が考える、アセスメントが苦手な3つのタイプを紹介して
います。実際に対象の情報を収集しアセスメントするには、広範囲にわたる
深い知識や、専門的な概念・メタ認知などさまざまな思考が必要であり、実
践の要となるアセスメントでは、正確に言語化することは意外に難しいこと
を説明しています。
 また、先人たちの言葉をたくさん引用しているので、きっと「看護の大切
さ」「看護のすばらしさ」を感じてもらえると思います。
 本書が、みなさまの指導と看護実践に少しでもお役に立てることを願って
います。

                        2023年10月 阿部幸恵

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