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シリーズ【看護の知】

わが子のケアの達人になる 「医療的ケア児」のママたちの奮闘

  • 草野淳子 著
  • A5 128ページ (判型/ページ数)
  • 2023年03月発行
  • 978-4-8180-2564-6
本体価格(税抜): ¥2,500
定価(税込): ¥2,750
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医療的ケア児の母親を“子どものいちばんのケアラー”へと導くために

医療的ケア児の母親へのインタビューを通して、わが子に行う医療的ケア技術の修得までのプロセスと、子どもの障害を知って苦悩する段階を経て、在宅療養に慣れ子育ての喜びを感じるようになるまでの心理的変化を明らかにしました。また、医療的ケア児の両親や在宅療養に関わる専門職のリアルな声も掲載。看護職、医療的ケア児等コーディネーター、ケアマネジャー、相談支援専門員等、小児医療にかかわる人にぜひ読んでいただきたい一冊です。


プロローグ─在宅療養の開始にあたりママたちに医療的ケア技術の修得が必要になったわけ
 1 ママたちに医療的ケア技術の修得が必要になった社会的背景
 2 医療的ケア技術の修得プロセス
 3 在宅移行期のつらさと周囲の支え
 4 訪問看護師の支援
 5 在宅療養開始時の医療的ケア技術の特徴
 6 本書の目指すもの

Ⅰ ママたちの語りからの分析
 1 ママたちが医療的ケア技術を修得していくプロセスの全体像
 2 在宅で子どもの世話を始めた時期の苦悩
 3 子どもの症状を自分で判断できるようになる
 4 私は子どものいちばんのケアラー

Ⅱ ママたちの医療的ケア技術の修得プロセスを読み解く
 1 ドレイファス・モデルとベナーの看護論を用いてママたちの医療的ケア技術の修得プロセスを読み解く
 2 ケアの根拠に気づくまで
 3 分析的思考の取得まで
 4 察知可能になる
 5 看護師の支援についての提案
 6 ママたちの医療的ケア技術の修得プロセスのまとめ

Appendix[付記]
 Ⅰ 研究方法の概略
 Ⅱ [関連論考1]医療的ケア児を養育する母親の困難と看護師のサポート
 Ⅲ [関連論考2]在宅療養児の父親の心理状態の変化と医療的ケア技術の修得
 Ⅳ [関連論考3]医療的ケア児を支える訪問看護師の活動

Voice
❶だれもが生きやすい明るい未来へ
❷WE ARE NOT SO DIFFERENT
❸医療的ケア児の育児を楽しめるようになるまでのわが家の奮闘記
❹私のメディカルケア奮戦記
❺“子どもと家族の当たり前”を実現する
❻当たり前のことをする相談支援専門員はケア児と家族にとって大切な存在!
❼医療的ケアは「命綱」
❽訪問看護は在宅移行期に力を注ぎます!


はじめに

私は大学に入職して小児看護学研究室に配属となり、小児看護学を専門としている。約30年前、20代の頃に関東方面の保健所に新卒2年目から勤務していた。政令指定都市だったため、自分の担当地域では、乳幼児期の子どもから高齢者まで幅広く担当していた。そして、低出生体重児、結核患者、公害認定患者等の個別の対応をするために、家庭訪問を行っていた。また、核家族化のため孤立している母親が多く、育児に不安感をもつ母親がみられた。そのため、子どもと母親のための自主グループ活動や脳血管疾患等により身体に障害を負った方たちのための自主グループ活動などを先輩と共に行っていた。中でも、低出生体重児のお母さんは、子どもが新生児集中治療室(以下、NICU)での入院期間があったことから、外に出るのを躊躇し、わが子の体重増加に一喜一憂していた。当時は、医療的ケア児が在宅で生活することはなく、未熟児訪問をしてもそのような子どもに出会うことはなかった。

博士課程(後期)を修了したのは、2016年3月であった。博士論文のテーマは、NICUから在宅へと退院した医療的ケア児に関するものを行いたいと思った。そのテーマを選定する中で、医療的ケアを担う家族に関する問題、特に母親について、焦点を絞ることになった。医療的ケアがある子どもさんの母親は、子どもの疾患や医療的ケアが必要であるという状態にショックを受けており、容易にアプローチができなかった。NICU入院中の子どもの母親は障害告知から時間が経過していないため、ショックが大きくインタビューできる状態ではなかった。そのため、訪問看護ステーションにお願いして、NICUを退院してある程度時間が経過した母親を対象に研究協力の依頼をすることにした。
研究テーマの焦点を絞る経過では、何に焦点を絞って行えばよいか思案に苦しむ毎日であった。24時間博士論文のことが頭の中から離れなかった。明けても暮れても研究のことを気にしながら、指導教員のダメ出しを受けていた。博士論文の研究の焦点を絞る段階が、こんなに苦しいものだとは思ってもみなかった。まさに生みの苦しみであった。毎晩が孤独との闘いであり、暗闇のトンネルにいるようであった。思えば、この段階が博士論文を執筆するうえで、今後の研究の真価を決める苦しい場面ではあるが、重要な前進であったと思い返される。この段階を乗り越えてこそ、ゴールに到達することができ、おろそかにすると価値あるものにたどり着けないといえる。そして、その苦しみを乗り越えることが研究者としての第1歩である。指導教員からは、博士論文は今までに研究されていない新しい知見を導き出すものでないと価値がないこと、研究者として世の中や看護に貢献できるものでなければならないことなどが何度も語られた。

在宅療養児に関する研究は、歴史が浅く、まだ十分に行われていなかった。医療的な資格をもっていない医療的ケア児の両親が在宅で子どものケアを担うことは、容易ではなかった。文献検索を行うと、母親や父親が子どもの障害を聞かされたときの衝撃、受け入れるまでのプロセスが記述されていた。そして、在宅に連れ帰ってきたときから生じる子どもへの責任の重さ、子どもの症状を判断することの困難感、その中で医療的ケアを担うことの難しさが、主に質的研究で語られていた。
これらの先行研究をじっくり検討させていただいた。子どもを在宅へと連れ帰った母親は、時間が経てば、医療的ケアをマスターして、子どもの状態を判断することができるようになる。「母親はどのようにして子どもの症状を判断できるようになり、医療的ケアに熟達することができるようになるのだろう」と研究の焦点が浮かび上がってきた。そして、訪問看護ステーションの看護を受ける在宅療養児の母親に質的研究でアプローチすることにした。

質的研究については、プロセス性を問う研究であることから、修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を選択し、専門家のご指導をいただいた。その分析の道のりが苦労の連続であった。まず、研究手法にのっとり、インタビュー結果を整理した。最終的な研究結果にたどり着くまでに、指導教員から何回もダメ出しを受けながら、結果図を書き直し、やっと現在の形となった。専門家から見れば、私の分析方法には疑問が残るかもしれず、お恥ずかしい面もある。その一方で、母親が医療的ケアを修得するプロセスとともに、母親の心理状態のプロセスも結果として残すことができた。

このようにして、博士論文ができあがった。論文のご指導をいただいた経過をメモしたノートや、質的研究に関するインタビューから分析までのメモノートは今でも大切に保管している。時々、当時を思い出しながら、パラパラとページをめくっては、初心に立ち返っている。今回はこの執筆を行うにあたり、取り出して読んでみた。約8年前のインタビューの場面が思い浮かび、博士論文執筆中の自分の研究者としての未熟さとその後の有りようが思い返された。

◉研究の概要
近年、社会的な背景を受けて、NICUから在宅へと移行する医療的ケア児が増加してきた。そのため、在宅で母親が医療的ケア児のケアをするケースが多々みられるようになった。
母親はNICUで看護師から子どものケア方法の指導を受け、見よう見まねで医療的ケアの実施方法を修得して、家庭へと子どもを連れて帰っていた。経管栄養や吸引などの医療的ケア技術の修得とともに、子どもの状態の観察方法や判断方法を身につけていかなければならなかった。看護師のように医学的知識や技術を系統的に学んだ専門家とは異なり、母親は自分で知識や技術を学ばなければならない。そのため、繰り返し起こる子どもの病態や症状から、毎日の経験を通して、知識やケア技術を修得していた。
インターネットでの検索、SNS等のメディアの活用、医師への質問等、母親は個々の探索方法を取り入れながら、自分の子どもの病態や症状の情報を得て、判断方法を学んでいた。医療職ではない母親がどのような過程でその判断方法を身につけていくのか、非常に興味深かった。
その経過は、ドレイファス・モデルやベナーの看護論に似た典型的な経過をとっていた。ベナーの看護論と異なる点として、母親は医療職のまねをしながら医療的ケア技術を身につけていたこと、自分の子どものみの身体的特徴を熟知し、判断力を身につけていたことがあげられた。それは、看護師のように系統的な医学的知識から身につけた根拠が土台にある理解の仕方ではなかった。そのため、勘による判断力が大きかった。

本書を出版することにより、これらの研究結果が医療的ケア児のお母様、医療的ケア児を看護する看護職の皆様への指標になれば幸いである。そして、医療的ケア児とそのお母様、看護職だけでなく、一般の方々にも現代社会の小児の問題を知っていただきたいと思う。

2023年1月 草野 淳子

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