ナイチンゲールが生きたヴィクトリア朝という時代

中島俊郎・福田智弘・滝内隆子・鈴木清史・村上リコ・野澤督・喜多悦子・出島有紀子・岡山寧子・髙橋裕子著
四六 164ページ (判型/ページ数)
2021年08月発行
978-4-8180-2350-5

ナイチンゲール、光と闇の大英帝国に生きる

産業革命により経済、科学技術、工学、自然科学等々が大きく発展した一方で、富める上流階級と貧しい労働者階級という〈二つの国民〉の分断が著しい格差社会でもあったヴィクトリア朝。
これまでのナイチンゲール研究ではあまり取り上げられてこなかった〈時代〉にフォーカスをあて、ナイチンゲールに及ぼした影響について、歴史、文化・社会史、西洋文学、人類学、看護学の研究者らが考察しました。

目次序文

フローレンス・ナイチンゲールとヴィクトリア朝…中島俊郎
ナイチンゲールが生きた時代―日本・東アジア…福田智弘
19世紀イギリス社会における移民とナイチンゲール…滝内隆子
オーストラリアにおける近代看護の幕開け─ルーシー・オズバーンが築いた礎…鈴木清史
ナイチンゲール家と19世紀イギリスの上流社会…村上リコ
ナイチンゲールのグランド・ツアー…中島俊郎
19世紀フランスの文芸・政治サロン─レカミエ夫人を知っていますか？…野澤督
アンリ・デュナンとナイチンゲール─赤十字の創設者が抱いたナイチンゲールへの思慕…喜多悦子
オクタヴィア・ヒルとナイチンゲール─貧困者の不衛生な住宅環境を改善する…出島有紀子
エリザベス・ブラックウェルとナイチンゲール─看護教育における接点と分岐点…岡山寧子
津田梅子とナイチンゲール─押し花が放つメッセージ…髙橋裕子

〈ヴィクトリア朝〉と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか──産業革命？万国博覧会と水晶宮？シャーロック・ホームズ？あるいは執事やメイドかもしれません。
ヴィクトリア女王の治世だった1840年代から1870年代はじめは、イギリスが世界経済の覇者として君臨した大英帝国の絶頂期でした。産業革命により経済、科学技術、工学、自然科学等々が大きく発展した一方で、富める上流階級と貧しい下流階級という〈二つの国民〉の分断が顕著な格差社会でもありました。
本書では、ヴィクトリア朝とはどういう時代だったのか、概要を示すとともに、上流階級の子女だったナイチンゲールが経験した社交界・サロン・大陸旅行（グランド・ツアー）の話題にも触れました。また、先駆的な仕事を成し遂げた同時代の四名の友人・知人とのエピソードも盛り込みました。
人の一生は、その人の生きた時代を知ることなしには語れません。偉大な業績を残したナイチンゲールの生きた〈ヴィクトリア朝〉という時代に目を向けることで、彼女の魅力を再発見することができるのではないでしょうか。（編集部）

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