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アセスメントフローで学ぶ

パーソン・センタード・ケアに基づく急性期病院の高齢者看護

  • 鈴木みずえ・金盛琢也 編
  • B5 232ページ (判型/ページ数)
  • 2021年06月発行
  • 978-4-8180-2344-4
本体価格(税抜): ¥3,000
定価(税込): ¥3,300
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多忙な急性期病院でも必ずできる! 患者・家族だけでなく看護師自身も満足できる 「PCC(パーソン・センタード・ケア)に基づく看護」を学べます!

今、急性期病院では高齢者を“ひとりの人”として捉えることが難しくなるくらい多忙です。しかし、「パーソン・センタード・ケア(PCC)」の考え方に基づいて看護を展開することで、高齢者やその家族が希望し、看護師自身も満足できる看護を提供できるのです。

本書では、PCCに基づく看護を実践するために、「情報収集→アセスメント→看護問題→看護計画→評価」の流れで捉える8事例の「アセスメントフロー」を提示しています。このフローを応用することで、あなたの“看護”が変わります!


第1章 パーソン・センタード・ケアを基盤とした高齢者看護過程
1-1“ひとりの人"としての高齢者の価値を急性期病院で認めることの重要性
1-2 高齢者が置かれた状況と抱く想いに関する「情報」を集める
1-3 パーソン・センタード・モデルに基づく「心身のアセスメントの統合
1-4 パーソン・センタード・ケアでつながる「多職種連携」
第2章 治療・緩和ケアにおけるパーソン・センタード・ケアの捉え方
2-1 高齢者の“想い"を聴いて治療を進めるプロセスの重要性
2-2 高齢者の緩和ケアにおける意思決定支援 ACP
第3章 高齢者看護過程におけるアセスメントフローの活用
3-1 パーソン・センタード・ケアを実現する5つのstepによるアセスメントフロー
3-1 高齢者の心身の機能変化とアセスメント
3-3 高齢者によくみられる症状と評価方法
第4章 アセスメントフローを活用した高齢者看護の実際
8事例のアセスメントフロー
4-1 誤嚥性肺炎で酸素治療を拒否するアルツハイマー型認知症の高齢者
4-2 意識消失で救急搬送後、せん妄状態になった高齢者
4-3 大腿骨頸部骨折術後の歩行障害・バランス障害のある高齢者
4-4 大動脈弁狭窄症の術後に認知機能が悪化した高齢者
4-5 脳血管障害後に無気力状態になった高齢者
4-6 酸素マスクを外してしまう急性呼吸不全の高齢者
4-7 前頭葉機能低下のある摂食困難高齢者における食支援
4-8 認知症のある高齢がん患者の意思決定支援
第5章 パーソン・センタード・ケアに基づく退院支援・地域連携
5-1 高齢者を中心とした多職種連携による地域包括ケアシステムの展開と実際
5-2 病院(入院機関)側の立場から考える在宅との本人の意思の共有
さくいん


わが国の高齢化の進展は著しく、2020年10月1日現在の高齢化率は28.7%となっています。今後もさらに上昇を続け、団塊の世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると予測されています。一方、日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳(2019年)となっていますが、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、平均寿命よりも男性は約9年、女性は約12年も短くなっています。そして、この期間が「要介護状態」の期間でもあるのです。
 老年期は“ライフサイクルの最終段階”として人生を統合する重要な時期でもありますが、加齢に伴う身体疾患や障害に向き合いながら、要介護状態の期間をできる限り短縮して毎日をよりよく生きることが、“その人”の人生全体のそのものの価値を高めるために非常に重要になっています。

 超高齢社会のわが国では、高齢者の入院者数もますます増加しています。高齢者は循環器疾患や脳血管障害など、さらに85歳以上の超高齢者は認知症と肺炎に加えて骨折と骨粗鬆症などの疾患をきっかけに入院することがあります。高齢者は身体疾患が複数並存することから、急性期病院への入院を繰り返しやすく、入院後もせん妄や認知機能の悪化、合併症などを引き起こしやすくなります。このため急性期病院での高齢者に対する治療継続やケア提供が困難になっていることも多いのです。
 また、平均在院期間は、近年の入院期間短縮の流れから平均16日となっていますが、平均在院期間が延長されたり、身体疾患が回復しても心身の機能の低下から退院後の介護施設への入居が増加しています。

 急性期病院では短期間での有効な治療効果が優先されるあまりに、クリティカルパスなど標準的なケアの実践が推奨されています。このプロセスに沿わない高齢者に対しては、ステレオタイプで「何もできない人、理解できない人」として捉えて、標準的な治療を優先させるために身体拘束が行われる傾向があります。治療やケアの選択に関しても、高齢者より家族の意思が優先されるなど、高齢者の意思や本人の状況に合わせた治療やケアが選択されにくい状況でもあります。

 パーソン・センタード・ケア(PCC)は、英国の臨床心理学者トム・キッドウッドが最初に提唱した「認知症ケアの理念」として知られています。認知症は加齢に関連した実行機能障害を主とした疾患でもあり、高齢者においても類似した症状は起こりやすく、パーソン・センタード・ケアは認知症だけではなく、高齢者すべてに活用することが可能です。
 入院中の環境や生活は、私たちが予想する以上に高齢者の想いやニーズが置き去りになっており、高齢者の生活が脅かされる現状があります。本書の刊行は「パーソン・センタード・モデル、さらに心理的なニーズと身体疾患に関する専門知識を統合させて、高齢者の看護過程を展開する」というチャレンジでもあります。
 高齢者が身体疾患を持ちながらも適切な医療・ケアを受けて最期まで自分らしく人生の統合に向けて生き生きと生きること,自分の人生を受け止めて安らかな最期を迎えること、それが高齢者看護の目標でもあります。パーソン・センタード・ケアは、高齢者だけではなく、どのライフサイクルにおいても、さらにはケア提供者においても必要なケアでもあります。高齢者を“ひとりの人”として捉え、その人の人生の豊かさや現在の心身機能の状況を統合して「パーソン・センタード・ケアを基盤とした看護過程」を急性期病院で展開することは、単に高齢者看護実践の質向上だけではなく、医療全体の質向上につながります。

 本書では、急性期病院で高齢者が医療を受ける際、パーソン・センタード・ケアに基づく心理的ニーズを踏まえて、フィジカルアセスメントや身体疾患のせん妄などの専門知識を統合させて、本人の視点からアプローチする看護実践を構築しています。急性期病院の高齢者の視点で実践を展開している認知症看護認定看護師や老人看護専門看護師、さらには医師の皆様に執筆していただきました。そこには、これから高齢者看護の質向上に取り組もうと考えている方に向けての熱い思いやメッセージがあふれています。どうかお手に取っていただき、スタッフステーションに置いて、日々の看護実践にご活用いただければ幸いです。

 本書の執筆や制作に関わっていただいた皆様のご協力に深く感謝申し上げます。特に日本看護協会看護研修学校長の吉村浩美先生には、本書の企画・編集におきまして、多大なご協力をいただきましたこと、お礼申し上げます。

 2021年6月現在、新型コロナウイルス感染症の第4波の最中にあり、最前線の医療・福祉・介護現場でご活躍の看護職・介護職などの皆様は、対策のためにさまざまな緊張とご苦労の毎日であるかと思います。
 そのような状況の中でも本書に関する作業を継続していただきました皆様のご協力に深く感謝申し上げます。この状況が一日も早く解消され、平穏な日々が取り戻せるよう心から願っております。

2021年6月
編集・筆者を代表して 鈴木 みずえ

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